藺草を継ぐ。伝統を継ぐ。中を継ぐ。
「びんご畳表」とは聞くけれど。幕府や朝廷に献上され、日本の国宝や重要文化財の多くに使われていることを知っていますか。修復する際にも「畳表は備後でなければならぬ」という指定があるほど、特別で唯一のものなのです。
ところが、数年前に福山市内の藺草(いぐさ)生産者がゼロになる事態が。福山市で「びんご畳表」を織ることができなくってしまったのです。 そこで、復活させた藺草の栽培。
また、とある国宝のお寺の修復の際、通常より大きい畳が必要となり、畳表の中央で継ぐ「中継」技術で「六配」サイズが織れる織機を生み出しました。 世界遺産・国宝・重要文化財などの歴史を継ぐ為に始動した動力織中継六配表と藺草の栽培。
継ぎながら、未来へとつないでいきます。
審査員ポイント
備後の文化を未来につなげる取り組み。クオリティを損なうことなく進化させている点が評価されます。
「びんご畳表」の中でも、最高級品と言われる中継表を動力化することでコスト削減と技術継承を達成していることは評価されます。
再び、藺草農家へ。
備後は藺草生産の最適地であり、その藺草を使った畳表は「びんご畳表」と呼ばれ、全国的に最高級の畳表として知られてきました。その歴史は600年以上あります。佐野商店は、福山市内に数多くあった藺草農家のひとつから始まった、畳表の製造卸売業者です。一時期、藺草の栽培はやめていたのですが、2011年に国内最高品質と言われる藺草を栽培してきた生産者さんが亡くなられ、福山市内の藺草農家がゼロになってしまったのです。そのことを知って衝撃を受け、十数年やめていた藺草の栽培を復活させることにしました。現在、熊野町と本郷町の圃場で藺草を栽培しています。
「中を継ぐ」ことで、最高の藺草を最高の畳表へ。
福山の藺草にこだわるのには理由があります。それは日本の国宝や重要文化財の多くで、古くから「びんご畳表」が使われてきているからです。それらを修復する際にも「びんご畳表」を使用するように指定されているところもあります。何としても備後産、もっと言えば福山産の藺草で作らなければならないのです。熊野町にある圃場は、文化庁の「ふるさと文化財の森」という、文化財の保存に必要な資材の供給地として指定を受けています。
そして、その備後の藺草を余すところなく最高の技術で織り上げるため「動力織中継六配表」という技術を開発しました。「中継」は織り方の種類、「六配」は畳の幅のサイズのことです。畳表には“引通表”と“中継表”があります。引通表は長い藺草を使って織っているもの、中継表は短い藺草を真ん中で継いで織っているものを指します。かつては藺草が短かったため、引通表の方が高級品でした。短い藺草を使って何とか作れないかと開発されたのが中継表です。当社が開発した「動力織中継六配表」は藺草の良い部分(軸の太い部分)だけで織り上げることができる最高のものです。中継表の技術は、寺社仏閣や文化財などにある、一般的な畳(約95cm)よりも大きな四配(約101cm)、六配(106cm)と呼ばれるサイズのもので使われています。動力かつ中継でそして六配で織れる機械そして技術をもっているのは当社だけだと思います。
有限会社佐野商店 代表取締役
佐野 良信さん
「必要」から生まれた「動力織中継六配表」。
この機械を作ることになったのは、とある国宝のお寺の修復工事をするにあたり、従来の幅では対応できない広い幅の中継表が必要になったためでした。これまで手動の機械でしか織ることができず1枚を仕上げるのに2日かかっていましたが、修復する際には数百枚が必要となるため何年もかかってしまいます。そこで、従来の中継表をより広い幅で織れるように改良した機械を独自に作り、1日で2~3枚の中継六配表が織れるようになりました。
次代に「伝統」を引き継いでいくために。
沼南高校の生徒さんや広島大学の学生さんは毎年植付けや刈取りに参加してくれていますし、興味を持ってくださっている一般の方々も、研修に訪れてくれています。また、地元の大学とも技術の継承という新たな取り組みを試行錯誤しています。福山の「びんご畳表」で世界遺産・国宝・重要文化財の修復が維持されているということを、ぜひ福山の人に知ってもらいたいと思っています。「びんご畳表」や藺草を知って、またやってみようかという若い人が出てきてくれれば嬉しいですし、そのための情報発信もしていきたいです。
国宝などの修復だけではなく、中継表の良さを知っていただく為にも、町屋の再生、古民家修復、おもてなしの一部屋へのご提案など、特別な空間作りのお手伝いが出来ればいいなと思っています。
刈取り時期の7月には、1.5mを超す藺草が青々と広がり、周りの人が「懐かしいね」とか「うちも昔は植えとったんよ」と声をかけてくださいます。途絶えることなくこの風景や技術を残し、次の時代に引き継いでいきたいです。
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有限会社佐野商店
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有限会社佐野商店
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福山市芦田町上有地2580-1
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